時代とともに葬儀形式も一般葬から家族葬、直葬など多様化・簡素化してまいりました。それにつれてマナーに対しても変化が見られるようになってきました。
そもそも「マナー」とは簡単に言えば、立場や価値観などが違う人たちが一緒に生活する社会の中で、守った方が皆、気持ちよく過ごせるのではないかという言動のことです。社会が変わればマナーに対しての考え方が変わるのも必然と言えるでしょう。したがって「従来のマナーが絶対!」ということにはなりません。
マナーを知っていても理由までは知らないこともあるかと思います。マナーの理由については諸説あるので必ずしも理由は1つではありませんが、なかにはへえ~というようなものもあります。
では、いくつか葬儀でのマナー事情を見ていきましょう。
※地域により変わることがあります
「毛皮・本革製品の服装・持ち物はNG」

毛皮・本革製品の服装・持ち物がNGの理由は皮を使っていることで「殺生」を連想させるからだとか。フェイクレザーなどの合成皮革は厳密には問題ないのですが、ぱっと見で見間違われるのも嫌なので避けておいた方が無難というのが風潮ですね。
さらにいうとダウンも羽毛からかつてはNGと言われていたようですがこちらは、最近はNGとまでは言われなくはなりました。ダウンはアウターとして一般生活に定着していますので、「着てこないでください!」とはなかなか言えなくなってきてるようです。
「女性の一連パールネックレスは何故つける?」

葬儀では基本的に華美な装飾品は避けた方が無難とされていますが、パールのネックレスに関しては葬儀で身に着けていい装飾品として認知されています。
なぜ、パールなのか。それは「真珠は涙の象徴」といわれているため、葬儀の際は結婚指輪と共に身に着けていい装飾品となったと言われております。
さらになぜ一連かというと、二連だと「(不幸が)重なる」、また一連でも長すぎると「(不幸や悲しみが)長引く」と連想させるそうだからです。
「お悔やみの言葉やお礼は小さく言葉尻は消え入るように」

声を小さく言葉尻を消えるようにするのは悲しみを表していると言われています。「消え入るように」は、声が詰まって出ていない様子だとか。「大きな声でハッキリ」はマナー違反と言われていますが、元々声が大きい方にしてみれば心外かもしれませんね。しかし逆に、普段大きな声の方が小さく述べる事でより沈痛さが相手に伝わるかもしれませんね。
変に意識して言葉自体が伝わらなくなるぐらいなら、特に意識せずに普通にお言葉を交わせばいいと思います。
「香典袋などの表書きは薄墨で」

個人的に好きなマナーです。なぜ薄墨かというと、本来の黒墨に涙が混ざって色が薄くなった=「悲しみを表している」と言われています。なんだか風流ではありませんか?
あくまでマナーなので、黒で表書きされても特に問題はありませんが、単にマナーだからと薄墨で書くのと、理由を知って書くのとでは偲ぶ気持ちも少し違うかもしれませんね。
「お通夜は普段着」

マナーとはちょっと違いますが、少し意外なことをご紹介。
大昔ですが、お通夜は喪服や礼服、それに準じる服装(黒のスーツなど)のほうが失礼といわれる事があったようです。理由としては、服装などを整える事が「不幸の用意をしていた(待っていた)」という解釈にとられてしまうからといわれています。
言い掛かりな感じはしますが、訃報というものは急に聞くもので、お通夜には「取る物も取り敢えず駆け付ける」=「急に聞いたのであわてて普段着で駆け付ける」様が良いとのことで、お通夜は普段着や仕事着でのお参りが全く問題ありません。
しかし難しいのが、上記の意味合いを遺族側が知っていなければ成り立たないということです。訃報を聞いて兎にも角にも急いで駆け付けたと言われれば、遺族側も悪い気はしませんが、そういう意味合いを知らず、また「大急ぎで駆け付けた」事が伝えられない、成立しない間柄などであれば、「普段着で来た、失礼だ」と思われかねません。
今現在は、お通夜に礼装で来て「失礼だ」と思う遺族側はほとんどおられませんので参列する相手側との関係を考慮して服装を選びましょう。
以上マナーとその理由について紹介しましたが、マナーとは相手側や周りも知っていてはじめて成り立つものであり、時代と共に変化もしますから、マナーの理由を知っているうえで状況に応じて使い分けていくことが重要です。そしてカタチにとらわれ過ぎず、故人を偲ぶ気持ちが一番大切ですね。「みんなが不快にならない言動」に注意を払い、相手の価値観に配慮した立ち振る舞いを心掛けましょう。