ご遺体の保全処置として最も一般的なのがドライアイス処置です。費用を抑えながら傷みの進行を遅らせることができるため、多くの葬儀で利用されています。
ご遺体の保全処置には主に「ドライアイス処置」と「エンバーミング」がありますが、現在でも主流はドライアイス処置です。
実際にはどのような処置を行うのか、どのようなメリットや注意点があるのかをご存じない方も多いでしょう。まずはドライアイス処置の仕組みから見ていきます。

ドライアイスとは
ドライアイスとは、約-79℃の超低温を保った二酸化炭素の固体です。固体なので持ち運びが容易で、溶けても液体にならずに気化し、その気化した気体もまた低温で冷却効果が保てます。
棺のような狭い空間内では、気化した冷気が外へ逃げにくくなるため、内部の温度が低く保たれやすくなります。納棺前より納棺後のほうがドライアイスの減りは緩やかになるのはこのためですね。
ドライアイスでの処置
大体が1回の処置で10㎏を使います。葬儀関係では10㎏を4ブロックに分けられているものが多く使われます。費用は処置料などを含めて1万円程度です。
顔の両側・胸・お腹の4か所にあてます。傷み防止が目的なので体内の水分が多いところを冷やします。
顔の横にあてるのは、脳は水分などが多いので冷やす必要があるのと、喉の気道を冷やすことで、体液などが口元へ上がってくることを抑える目的もあります
胸を冷やすのも同じ気道の理由ですが、ご遺体の状況などによっては胸よりもお腹を重点的にあてる場合があります。内臓が集中しているお腹を冷却することはとても重要なのです。
そして超低温なので、肌に触れるところにあてる際には低温火傷の軽減のために綿花などでドライアイスを包んだりする必要があります。
安置状況や故人様の状態によって異なりますが、目安として納棺前は毎日、納棺後は1~2日に1回のドライアイスの追加が必要となります。
ちなみに、ドライアイス処置の際は遺族の方も見てくださって構いません。出血などの状況では葬儀社のほうから、ご遠慮くださいと言う場合はありますが基本自由に立ち会っていただけます。

ドライアイス処置のメリット・デメリット
一番のメリットは費用面と手軽さです。ドライアイスの処置に専用の場所や機材などは必要なく、故人様をご安置しているところで処置が可能です。先述したように、ドライアイスは持ち運びに便利なので、スタッフ一人で充分処置が可能なため、費用も抑えることができます。
デメリットは、低温火傷の可能性があること、二酸化炭素中毒などの事故、ドライアイス追加の頻度、一般的には一週間程度が一つの目安であることなどが挙げられます。
ドライアイスの取り扱い
手などの末端は冷気の影響を著しく受けるため低温火傷になりやすく、またご安置の際に両手は胸やお腹の上に組むことが多く、ちょうどドライアイスをあてる箇所に近いことも要因の一つです。そのため、ドライアイスが手に触れる際は出来る限り綿花や布を間に挟み直接触れないようにします。そしてその効果は高いのですがそれでも状況による差がある以上絶対に低温火傷は大丈夫とは言いきれません。
ドライアイスは先述したように「二酸化炭素」の固体です。気化した気体もまた二酸化炭素です。過去には、棺に納められたご遺体に顔を近づけすぎたことで、二酸化炭素を吸い込みそのまま亡くなられた事故が起こり、ニュースでも報じられたことがあります。
しかしながら、そこまで神経質になる必要はありません。御自宅などで安置する際にドライアイスをあてていても、通常は特に危険はありません。
ただし、棺のような気体が充満しやすい空間では、二酸化炭素が滞留することもあるため、蓋を開けた状態で顔を長時間近づけることは避けた方が安全です。

エンバーミングとの比較
超低温での処置といえども、傷みがすでに発生している場合は、その時からドライアイス処置をしても、傷みの進行が止まる、臭いなどが消えるといった効果はありません。あくまで「進行を遅らせる」ことが限界です。
とはいえ、通常のご安置であればドライアイス処置で充分なケースがほとんどです。その時の状況によって処置の選択肢は変わりますが、多くの場合はドライアイスによってご遺体の保全が可能です。
一方で、火葬まで長期間かかる場合や、諸事情により一週間以上の安置が必要となる場合には、「エンバーミング」という選択肢もあります。そのため、長期安置が見込まれる場合は、傷みが始まる前に適切な処置を行うことが重要です。
近年はエンバーミングの件数が増えてきていますが、その背景には都市部を中心に火葬までの日数が長くなるケースが増えていることもあるでしょう。ただ、なかには3~4日程度の安置期間でもエンバーミングを勧める業者があるとも聞きます。そのような提案を受ける機会が増えたことも、利用件数増加の一因かもしれません。
業者から勧められると、「必ず必要な処置なのだろう」と考えてしまいがちです。しかし実際には、必ずしもエンバーミングが必要とは限りません。ドライアイス処置の特徴や限界を理解しておけば、業者から提案を受けた際にも判断材料の一つになるでしょう。
さいごに
ご遺体の状態や安置環境によって適切な処置は異なります。何が必要で、どこまでが必要ないのか判断に迷う場合は、事前相談などを有効に活用してください。できる限り後悔のない、納得した形で葬儀に臨んでいただければと思います。



